kumac's Jazz -92ページ目

Lizz Wright『Dreaming Wide Awake』

 私の住む街では、FM放送で20年以上もの間、ジャズの番組が続いている。その名は『ジャズ・ストラッチン』番組の前には、現在、ズポンサーのNECが付いて『NEC ジャズ・ストラッチン』となっているが、昔は違うスポンサーが付いていたはずだ(記憶が不確か)。この番組のなんと言っても一番の魅力は、アナウンサーの板橋恵子さんのハスキーな大人の女性の声である。これは、僕だけでなく、誰でもが認める定説になっている。
 この番組は、土曜日の午後7時という、とてもリラックスする時間帯に放送している。これがまた、聴く者の精神的、肉体的状態を最高のものに押し上げている。kumacの新譜に対する情報のほとんどは、この番組が源である。それ以外は、CDショップでの視聴や、ジャケットがかっこいいとか、紹介の文章にくすぐられたリといった感じでの、衝動買いぐらいである。
 昨日の『ジャズ・ストラッチン』では、キース・ジャレットやジミー・スミスの新譜など紹介されていたが、kumacは最後に聞こえてきた曲にノックアウトされてしまった。それは、Lizz Wrightの「ア・テースト・オブ・ハニー」。ギター1本の伴奏に、アカペラ風に歌う彼女の、ブルージーな雰囲気と言ったら、言葉での表現のしようがない。昨日、ちょうど、「スイング・ジャーナル」6月号を本屋で立ち読みしたら、やたら大きく宣伝んされている女性がいたが、最近のジャズ会に疎いkumacは「?」これ誰?で意識を通過しただけのLizz Wrightであったが、ここ土曜日の午後7時45分に至って、これは凄いと唸った次第である。このCDは、他の曲を聴いていないので全体像がわからないが、全てよしとなるはずである。
アーティスト: リズ・ライト, Toshi Reagon
タイトル: ドリーミング・ワイド・アウェイク

Kenny Drew『Kenny Drew TRIO』

 昨日、いつものようにiPodShaffleで音楽を聴いていた。場所は、町の中心部を走るバスの中。外は、小雨。聞こえてきたのは、小気味よいスイング感満点のピアノの音。曲は『イッツ・オンリー・ア・ペーパー・ムーン』、初めて聴いた新鮮な興奮がわき上がる。そして、体がそのリズムに乗って揺れてくる。次に、頭んも中を、「えっつ、こんなに素敵なアルバムだったっけ」と思ってもいなかった意外な出会いに嬉しくなる。
 僕が一番Jazzに夢中になっていた頃、スイングジャーナルのゴールドディスクとして、幻の名盤復活として大々的に紹介されたアルバムがこのリバーサイドのKenny Drew『kenny Drew TRIO』ふだった。後年、彼が欧州に渡って、どちらかというと、ムードミュージック的なきらびやかさを放つ演奏が目立ったKenny Drewだが、この1957年には、ブルース感がぷんぷんした硬質の音を聞かせてくれている。一つの音ひとつの音が、立っている。よっぽど、調子のいい、脂の乗り切った時の録音なのだろう、脇を固めるポール・チェンバースとフィリー・ジョー・ジョーンズも言わずと知れたマイルスの黄金期を支えたリズム隊で、乗りがよく、このドライブ感に鼓舞されて、Kenny Drewも最高のパフォーマンスを披露している。
 じめじめとした梅雨の日本で、最高にさわやかにしてくれるジャズの名盤ですね。
アーティスト: ケニー・ドリュー・トリオ, ケニー・ドリュー, ポール・チェンバース, フィリー・ジョー・ジョーンズ
タイトル: ケニー・ドリュー・トリオ

植草甚一『コーヒー一杯のジャズ』(植草甚一スクラップ・ブック23)

 kumacにとって最良のジャズ評論家は、今は亡き鍵谷幸信であった。彼のおかげで、ヨーロッパのフリージャズやアルバート・アイラーに出会うことができ、ジャズとは関係ないけれども、エリック・サティ、マルセル・デュシャン、W.C.ウイリアムズを知ることができた。
 でも、もう一人、気になるへんてこりんなおじさんがいた。それは、植草甚一。彼は映画評論家がメインの仕事で、音楽は現代音楽からジャズに入ってきたようだ。そして、そのジャズに入らんとした時期が、kumacのジャズ人生の始まりと、ほぼ一致する。だから、ジャズの好みが、非常に合う。よって、彼の本を読んでいて、すごく楽しいに、頭の中にすーっと入ってくる。
 この本は、大きく二つの内容に分かれている。前半は「コーヒーとモダン・ジャズ」。後半は「モダン・ジャズと映画」である。僕は、前半の13に分かれている文章の最後の章「現代音楽にむかう若い人たちの心理」がとっても面白かった。どうして、難解な現代音楽やフリー・ジャズが受けるのか。その心理をとても明快に説明している。そして圧巻は、フランスでの5日間に渡る音楽祭におけるジャズの出演者達のなんとも凄い(懐かしい)こと。この音楽祭は、現代音楽とロックとジャズがごちゃ混ぜのようで、ロックの先頭にはピンク・フロイドが名を連ねている。で、ジャズは、アーチー・シェップ、サニー・マレイ、アート・アンサンブル・オブ・シカゴ、ジョン・サーマン、フランク・ライト、デイブ・バレル、アンソニー・ブラックストンとなる。
 後半の「モダン・ジャズと映画」は、専門家らしく、映画の心理描写と音楽(ジャズ)関係性など、『死刑台のエレベーター』『大運河』『危険な関係』といった映画のシーンを詳しく説明した詳細な文章となっている。う~ん、映画が苦手なkumacでさえも、映画見たくなってしまいました。今度、レンタルで見ようかな。
著者: 植草 甚一
タイトル: コーヒー一杯のジャズ

Keith Jarrett『Radiance』

 このKeith Jarrettのソロ・コンサートのCDは、2002年の日本ツアーのうち、大阪でのコンサートを演奏順にそのまま全曲を収録し、その他に東京公演の4曲を加えたものである。Keith JarrettがこのCDに寄せた文章では、「今までの私は、演奏するたびにエネルギーを新しいものに変換することに主眼を置いてきたが、今度はエネルギーだけでなく実際の楽曲形式も、新しいものに変換される素材の中に含めてしまおうと思ったのだ」(CD付属パンフレット、訳:坂本信)と、これまでのソロと違う演奏意図があったことを書いている(全て即興演奏であることには変わりない)。だから、このCDを聴くための礼儀は、CDを曲目順に聴くべきなのだ。
 しかし、kumacの現在の音楽の聞き方は、iPodshaflleに曲を詰め込んで、ランダム順に聴く方法である。キースのソロ以外に、ケニー・ドリューのトリオ演奏、エリック・クランプトン、ウルフルズ、BEGIN、一青窈などがランダムに再生される中に、キースのソロがランダムに入り込んでくる状況である。これは、次に何が出てくるのかわからない楽しみや、前の曲と後の曲とが絡み合う偶然性の妙が楽しめるってことで、そこがここ2年以上の間の音楽鑑賞スタイル(ほぼ9割)になっている。
 だから、このキースのソロCDをkumacは、キースの意図を無視して聴いたことになる。結果、一曲一曲が、独立して、よりくっきり現れてきたのではないかと思っている。冒頭に書いた、キースの演奏の意図を読んで、改めて感じるのは。一つ一つの曲が形式として完結しているということである。最初の『ソロコンサート』のような、一つの演奏の中で流れるように次々と曲の雰囲気がかわっていくということでなく、このCDでは一つの曲が明確な曲の雰囲気(ゴズペル、現代音楽、クラッシック、キースフルなジャズ(?))を持っている。そういう意味では、これまでのキースのソロ演奏の集大成と言えるかもしれない(まだこれからも進化し続けるが)。この演奏の形式が、より洗練され、よりキースらしい集約されていくとしたら、これまでになかったものが生まれる、恐ろしい予感がしてくる。逆に言えば、密封された美術館における回顧展的な作品の陳列にならないように祈るばかりだ。kumacは、今年の10月14日~20日の日本ツアーを聴きにいき、この目で、この耳で、確かめたくなってしまった。ちょっと遠いけれど、10月14日の東京でのコンサートには、無理すれば行けそうであるが、チケットは手に入るのだろうか?
アーティスト: Keith Jarrett
タイトル: Radiance

Dollar Brand『African Piano』

 これを初めてFMのラジオで聞いたときの衝撃は、今でもはっきり覚えています。キース・ジャレットのカントリー調な泥臭さとはまた違った風土です。よく、アクバルの歌を読み会で酔っぱらうと歌って踊ってました。馬鹿なkumacでした。山形でのジャズフェスに来ていて、生を聴いたときは、ちょっと泥臭さがなくなっていて、がっかりしましたが。大いなるアフリカンミュージックをジャズで表現した偉大なるミュージシャンです。kumac的には、アルバート・アイラーやドン・チェリーのような路線を歩んでほしかったと思ちゃいます。とっても好きなLPです。
アーティスト: ダラー・ブランド
タイトル: アフリカン・ピアノ

 

Blossom Dsarie『Blossom Dsarie+3』

 kumacは、隔週ごとに県立図書館からJazzのCDを3枚づつ借りて、聴いています。昨日、借りてきたのは、Blossom Dsarie『Blossom Dsarie+3』、Art Tatum『The Tatum Ben Webster』、Kenny Drew『Kenny Drew Trio』の3枚です。そして、家に帰って、一番最初に聴いたのがBlossom Dsarieの『Blossom Dsarie+3』です。日曜日の何もやることがない、とてものんびりとした時間に、ゆったりとボーカルのアルバムを聴く、なんて素敵な日曜日の朝でしょうか。
 彼女は、キュートな(ハスキーボイス、という言い方もあるようですが、kumacにはキュートでかわいい声っていう印象です。)声で、他の女性歌手とは、かなり趣の違ったジャズ・ボーカルを聴かせてくれます。このアルバムでも、小気味よい乗りとともに、時にはフランス語で歌ったり、音数の少ないけれどもスイング感を逃さないピアノソロを披露しています。脇役は(一部の曲は違いますが)ハーブ・エリスのギター、レイ・ブラウンのベース、ジョー・ジョーンズのドラムというとっても、渋いメンバーですね。レイ・ブラウンのボーカル伴奏は最高です。
 kumacがこれまでに好になった女性ボーカリストは、ベティー・カーター、アン・バートン、サラ・ボーンです。それに、今回ブロッサム・デアリーも確実に加わりました。
 最後の1曲「Blossom 's Bluse」(ボーナス・トラック!)の、なんとかわいいこと、最高です!!
アーティスト: Blossom Dearie
タイトル: Blossom Dearie

B.B.KingとPhineas Newborn Jr.

B.B.KingとPhineas Newborn Jr.


 B.B.Kingの1949年の初リリース作「Miss Marthe King」のピアノストがPhineas Newborn Jr.だってことを、このB.B.KingのCD『KING OF THE BLUES』のメンバー表を見て初めて知りました。このCDでPhineas Newborn Jr.がメンバーになているのは、「Miss Marthe King」と1951年録音の「She's Dynamite」の2曲だけです。1曲目では、リズムを刻むだけですが、2曲目では、まさにブルースピアニストの乗り聴かせてくられます、ジャズの世界において両手使いのテクニシャンと言われた片鱗は、全くありませんが、気持的に音数が多いかな、なんて思っちゃいます。Phineas Newborn Jr.の作品には、『ハーレム・ブルース』なんていう、ブルースそのものの名前を付けたCDがあったりすることを、今、改めて発見し、聴いてみたくなりました。
アーティスト: B.B. King
タイトル: King of the Blues [Box]

RAY BRYANT「GODFATHER」

GODFARHER



 レイ・ブライアントとの最初の出会いは、あのモントレージャズフェスティバルでの、ソロ演奏です。当時、NHK-FMで毎週夜の8時頃からジャズ番組があって、児山紀芳氏が「Alone at Montreux」を新譜として紹介してくれました。それを聴いて、即、LPを買いました。それから、彼の演奏を聴くたびに、このモントレージャズフェスの、ブライアント節が蘇ってきます。
 この「GODFATHER」は、CDショップで新譜として紹介されてあり、最初の曲「2度東、3度西」を視聴して、即、買いました。このCDは、ジョン・ルイスを偲んで録音されたものです。あまり、ブライアント節が出てきません。それは、旧友に捧げたことが、理由の一つとしてあるのではないかなと思います。最近は、遠出するときに必ずときに、よく車に積んで聴いています。

Duke Ellington「Money Jungle」

 デューク・エリントンのピアノ演奏がとても好きで、ビッグバンドじゃなくて、コンボの演奏ばかり集めています。その中で、ピアニストであるエリントンの、前衛的な演奏を聴くことができるのがこのCD「Money Jungle」じゃないかと思ったりします。スイング・ジャズとはまた違った感情的な乗りの良さが堪能できます。大御所3人の演奏ですので、どっしりとした重量感もあり、「サイド・バイ・サイド」のような軽やかさとはまた別のよさが堪能できます。これって、ついつい以前に買ったのを忘れ、2枚も買い求めました。

Money Jungle

パーシー・ヒース逝く

 昨日の新聞の、死亡記事欄に載ってました。パーシー・ヒース死亡。享年81歳。
 日経新聞のネットでは、MJQのことを、伝説のジャズバンドなんて書いてます。これって、ちょっとドッキリです。そんな幻なんかじゃあありません。
 エリック・クランプトンのクリームでさえ、伝説のバンドなんていわれませんよね。

 ヒース・ブラザースってあって、そのメンバーは、ジミー・ヒースのテナーに、アルバート・ヒースのドラムスにベースがパーシー・ヒースって具合だったようです(今、検索で確認)。
 MJQのラストとコンサートのレコードを友人から借りてよく聞いた思い出があります。

 今、思えば、兄弟みんな、地味な演奏をしますね。