A.Navarro&T.Holmes『Heritage of the Invisible II』 | kumac's Jazz

A.Navarro&T.Holmes『Heritage of the Invisible II』

 久しぶりの記事掲載です。この間、健康診断で左耳の低音の聴力がかなりう低下しているのがわかり、それ以来極力、集中して音楽を聴くことを止めていました。それでも苦にならなかったのは、特段、集中して聴きたい音楽がなかったということだと思った次第です。自分にとってどういうことが起きていたのかよくわかりませんが、外的要因としてはオンライン配信が主流になりつつある中、あえて物(CD)を買ってまで聴きたいものが特になく、その薄らいだ気持ちを結局ネット上に溢れ尽くすジャズを把握することは、これまで以上にみみっちい作業にねることに嫌気が差したということかなと思います。

 

 最近(ここ1年くらいです)、少しずつジャズを聴き始めてはいました。聴いていたのは、NHK-FM で放送されている(聞き逃し配信は後ででも聴けるのでうれしいですね)、「ジャズナイト」です。大友良英はどうも好きにはなれないのですが(笑)、ジャズのことを本当にわかりやすく紹介してくれています。まあ、とてもまろやかなおじさんになっていて、尖っていないのがいまいち気に食わないのですが、それにノイズミュージシャンらしく振る舞って欲しい((そんな振る舞いがあるのか?ないね)と思うのです。で、この番組で印象に残るのは、オーネット・コールマン特集でのオーネットの音楽の解説とエルビン・ジョーンズ特集で流された彼の最初のレコーディング演奏です。エルビン・ジョーンズの最初のレコーディング演奏は、kumac が最も愛してやまないジャズミュージシャンであるビリー・ミチェルのバンドでの演奏でした。それを聞いた瞬間、おったまげた kumac でした。

 

 この間、これもずっと追っかけていたリー・コニッツが新型コロナウイルスで死亡しました。このブログを更新していた頃に最後にやり残したのが、彼の邦訳本アンディ・ハミルトン『リー・コニッツ ジャズ・インプロヴァイザーの軌跡』(小田中裕次訳、DU BOOKS)読了後の紹介記事でした。もう一度、読み直してこのブログで感想を書きたいと思います。

 

 で、再開です。昔ほどのページにはならないと思いすが、気が向いたときにたまに更新したいと思いますが、そこで再開するに当たって何から感想を書こうかなと思ったら、思い浮かばないのです。過去の録音はちょっと面白くないというか、まだ興味がわかないので、何か新しいジャズを聴きたいなと思ったのです。しかし、どこから入っていいかわかりません。ヒントは、先ほど照会した大友良英のラジオ番組にありました。シカゴジャズです。

 

 と長い前書きを終えて、これからこの Aquiles Navarro And Tcheser Holmes『Heritage of the Invisible II』の感想を書かせていただきます。

 

 最初、新調した iMac 27inch に音のデータを取り込み、ヘッドフォンのジャックを差し、現れた音がどうもへんなノイズだったのです、なにやら最新の iMac とヘッドフォンの相性が悪くて接続不良を起こしているのと思ったのです。そこで何度もジャックを取り外してはまた入れ込む作業を繰り返したのですが、改善しません。その間、iMacのミュージック(ソフト)は1曲目を再生しています。そうです、このノイズは1曲目「Intial Meditation」だったのです。そこで思ったのが、ああやっぱり・へ・ん・て・こ・り・ん・な・演奏だというものです。そう、未知の識らない音を聞きたかったのです、その意味でこのCDを選んだのは正解でした。

 

 全体を聞き通しただ印象は、<雑多>です。当然、何かの音楽の影響は聞き取れるのですが、その組み合わせが新鮮です。例えば10曲目「「remix by madam date」は電子音のビートボックスの音が延々と鳴り続けます。このビートはもはやジャズという範疇には入りませんね。ソルフル・ミニマル・ミュージック・ファンク・ボックスという感じです。タイトルに「remix」と入っていますから彼らの表現する音楽の一部だということなのでしょう。

 

 1曲目「Intial Meditation」は、最初の瞑想と訳せるのでしょうか。この作品の冒頭に置かれた精神的な初まりの状態ということでしょうか。曲の中で言葉が語られますが、スペイン語(多分)です。ですから、この作品の演奏者である2人のうちの1人であるトランペッターであるパナマ系カナダ人のアキレス・ナヴァッロの母国語です。シカゴを拠点に演奏をしているのですが、自分たちの存在の根源はどこにいても同じということでしょうか。多様性というものともちょっと違う感覚です。

 

 2曲目「plantains」は、シンプルなアキレス・ナヴァッロのトランペットとアンドチェザー・ホームスのドラムの掛け合いの演奏です。そこに何かの趣向(トランペットのエコーはありますが)はありません。こういう非メロディアスな演奏は、最近、kumac は好きです。音楽ではなく、最近は小説を読む場合、あまりただ単に言葉が書かれているものが好きです。だからボルヘスの『砂の本』やプルースト『失われた時を求めて』とか安心して読めます。そういう感覚です。尖っていて好きです。

 

 4曲目「M.O.N.K(Most Only Never Knew)」は、題名の通りセロニアス・モンクとの関連の作品(多分彼に捧げている)です。アップライトピアノによるモンクメドレーソロ演奏です。演奏は Nick Sanders括弧に入る副題らしき「Most Only Never Knew」はエキサイト翻訳だと「ほとんどは決して知らなかっただけである」となりますが、意味はこれでいいとは思いませんが、どこか頓智の効いた言葉なのだと思いますが、モンクか文句あんのか、的なノリりでしょうか。

 

 やっぱり面白いですね。いい演奏を聴かせていただきました。ジャズというカテゴリーがどんどん広がっていき、周辺の音楽と溶け合って、時には輪郭を明確にしたり、入れ替わったり、と。それでもジャズと認識して聞く己、面白いです。

 

 録音は、2019年10月30日と11月2日(2ndと表記されており日付でない可能性があります。)だと思いますが、クレジットを読むと2013年とか2017年の音源もありそうです。