Miles Davis『'Round About Midnight』 | kumac's Jazz

Miles Davis『'Round About Midnight』

 言わずと知れたマイルス・デイビスの代表作の一つです。kumac は、これまでまともに聴いたことはなく、TSUTAYAに行ったらジャズコーナーに置いてあったので借りてきました。

 

 TSUTAYAに貸しCDとして置いてあること自体が、需要を見越してのことでしょうから、マーケットとしてはかなり貧弱で、TSUTAYAでジャズのCDを借りることのない、コアなジャズファンを商売の対象と想定しているのではないことは明白です。そうではなく、世間一般の様々な状況の中で止むに止まれず聴かなければならない人(例えば劇中の効果音、コマーシャル等の背景の音楽、焼き鳥バーのバックグラウンドミュージック)、ジャズに興味がありるけど、どれから聴いていいのかわからず、入門書で推薦されている作品をとりあえず借りる人、マイルスは嫌いだが、一度は聴いておかなければ批判はできないと思う人、などなど人の数のコンマ何パーセントは興味を持つCDだということになりますか。

 

 正直な話、kumac が持っている表題曲の「'Round About Midnight」の曲のイメージは、このCDの音です。本家のセロニアス・モンクの演奏での音のイメージはあまり、いやほとんどありません。意図しなくても、どこかですり込まれているのですね。

 

 マイルス・ディビスは不思議なジャズミュージシャンで、どの時代でもどちらかと言えば、その時々の人気のあるスタイルから、ちょっと距離を取っています。ビバップではいわゆるクールジャズを試み、ハードバップの時代はミュートを主体にしてエネルギッシュな演奏ではなく、抑制された即興演奏を展開し、バンドの音を組織化してゆきます。マイルス・ディビスは、彼なりのやり方で時代の空気を表現していることになるのですが、その結果が他のミュージシャンと違った手法というか音の響き方を追求していたように思います。

 

 この『'Round About Midnight』の録音は、1956年です。さきほど、バンドの音を組織化、とかきましたが、今聴くと、すごくコマーシャルな音に聞こえます。コマーシャルな音とは、誰にでも好まれる一般的な音、ということです。どうして、そう聴こえるかと言えば、それは多分、イメージ通りの音なのだからだと思います。イメージとは、マイルスが持っていたイメージでもありますし、今、多くの人が聴きたいと思う、<大衆>が持っているマイルスのイメージでもあります。

 

 そう考えると、ボーナストラックの4曲は、明らかに必要ないと思います。違和感があります。イメージを外す可能性があります。