Sebastian Noelle『Shelter』 | kumac's Jazz

Sebastian Noelle『Shelter』

 1973年ドイツ生まれのギタリスト、セバスチャン・ノエルの作品です。ネットでググるとヨーロッパの現代ジャズギタリストと出てきますが、2002年からはアメリカに活動の拠点を移しています。

 

 ジャズにおけるギターによる表現は、なかなか難しいと kumac は考えています。まず、切り口の問題。例えば、集団演奏におけるリズム楽器としての柔らかいジャズギター、例えば、チャーリー・クリスチャンから続く、ワンホーンライクなブルージーでシングルトーンのメインストリームを貫く陰影を持つジャズギター。そして、ロックの影響を避けて通れなくなった感情を露出したジャズギター。そして、ヨーロッパに起きた実験的なジャズギター(ディレク・ベイリー、テリエ・リピダル等)。

 

 様々な音楽と融合してきたジャズの歴史の中で語ることもできるし、そうかと言えば一瞬で感知してしまう音色で語ることもできるような気がします。

 

 グラント・グリーンの音色とパット・メセニーの音色は明らかに違います。では、ジム・ホールの音色はどちらに近いか・・・・。これは、感覚的というか、感情的なもので好き嫌いに繋がるものです。

 

 セバスチャン・ノエルは、ジャズの歴史的な系譜の中で捉えれば、テリエ・リピダルの演奏に近似的な印象を持ちました。やはり、活動の拠点をアメリカにしているとは家、演奏はヨーロッパ大陸の匂いを感じます。また、環境音楽に近いものを目指しているとも感じます。

 

 例えば、4曲目「Rolling with the Punches」はミニマルミュージックの手法を使いながら、何かを主張するわけではなく、ある一定の音の印象を描いてゆくものです。それは、気持ちよいものです。けっして感情を揺さぶるものではなく、あくまで場を静めるための音、手法というものです。セバスチャン・ノエルのギターの音色の特徴を演奏と絡めるとすると、こういった演奏が一番、しっくりとくるのではないでしょうか。

 

 どちらかというと、こういう演奏からフリーフォームに近い傾向の演奏が多いのですが、心地良さを求める方向に向かわないこと自体が、ジャズの本道を行っているとも言えるかと思います。こういう芯の強いミュージシャンは尊敬に値します。つまり、決してメジャーに向かわないところがいいですね。 

 

 こういう音楽にはかなり生理的な感情が先に走ってしまうことが多いと思いますが、、音楽接する態度としては、「現に今、聴いてい」るということ自体いおいては、それが受動的だろうが能動的だろうが、自分の<心に起こったこと>に素直に従うことが肝要かなと思います。そして、それがどうしてだろうと自問自答することができたら、もっと素晴らしいことではないかと思います。

 

 

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