Sal Mosca & Warne Marsh『Quartet volume 1』 | kumac's Jazz

Sal Mosca & Warne Marsh『Quartet volume 1』

 正式なタイトルは『Sal Mosca ・ Warne Marsh Quartet volume 1』。つまり、サル・モスカとウォーン・マーシュの双頭バンドのセッションを2枚のCDにしたうちの最初の1枚ということです。録音は1981年、ビレッジ・バンガードでのライブ録音です。発売は、1992年(多分この年が最初の発売)なので、プライベート録音に近い音源なのかなと、最低限、作品としてなにがしかのタイトルを付けて演奏の記録を発売する予定はなかったものだと思います。
 この二人の共演はかなり多いようです。有名なところでは、『リー・コニッツ・ウィズ・ウォーン・マーシュ』でピアノを演奏しています。トリスターノ派の音楽理論が染みついている二人なので、そのような演奏になっています。どこがどうのと kumac が書けないのは、イマイチ、トリスターノ派の音楽が理解できていないからです。でも、こうやって結構、飽きずに聴いているのは、好きだからです。どういうとこがと、聞かれたら、「よくわからないところ、と、でも、妙に(気持ちに)引っかかってくるところがあるから」という感じの答えになるのかなと思います。
 やる気度でいえば、サル・モスカが断然、ここではやる気を出しています。この日のギグは、もしかして、サル・モスカの名前でクレジットされていたのかもしれません。ウォーン・マーシュの出番は、それ相応にありますが、さして気持ちが入った演奏でもなく、要はいつものウォーン・マーシュらしさ満開で、果敢に何かに挑戦する気配は皆無です。それにくらべ、サル・モスカは師、トリスターノの演奏をさらに進化させようとする気迫が演奏に感じられます。具体的に言えば、リズムのずらしを次への推進力に変えている、ということでしょうか。ピアノは、メロディアンスな打楽器なので、リズムにメリハリを加えずに、一定にしてメロディーだけで音楽を家具(サティとは違うのですが)や筆記用具のようにさりげなく使う、仕舞う。そいういう生活様式に対して、本棚を道具箱のように使うとか、椅子を逆さに天井から吊し、部屋のディスプレイにするとか、なんかそんな気持ちを感じます。
 そういう風に考えてゆくと、5曲目「Dig - Doll」ののっけから畳み掛けてくるウォーン・マーシュのテナーのグネグネ感が最高に緊張感をもたらしてくれます。しかし、興が乗ったところで、何故かこの演奏はウォーン・マーシュのソロの途中でフェードカットされています。この後、続くマーシュのソロがなにか破綻をもたらしたのでしょうか。6曲目「Under - Bach」でも、マーシュの独壇場となっています。いいですね。ここでの演奏は、最高です。やる気を出しているな。前言撤回です。

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