Lorenzo Tucci『Sparkle』 | kumac's Jazz

Lorenzo Tucci『Sparkle』

 イタリアのドラマー、ロレンツォ・ツォッチの2016年録音の新作です。kumac はイタリアのドラマーでは、これまで聴いた中でロレンツォ・ツォッチは最高のミュージシャンの一人だと思っています。どこが、と問われれば、音色が豊富だと言うことです。テクニックとは違います。確かにテクニックはあると思いますが、それだけでは良い演奏はできないはずです。演奏の中で、ここはこういう音を使うというタイミングなり、単調でないリズムの取り方なり、その選択が感覚がとても新しいセンスを感じるのです。饒舌でもあるし、かといって出しゃばらない、しかし寡黙でもない。
 kumacは、ファブリッツオ・ボッソとブルーノート東京でライブをしたときに聴きぱぐっているので、実際の生の演奏は聴いていないわけで、その意味ではかなり我田引水になりますが、きちんと自己主張ができるドラマーとしては、今、名前を挙げろと言われれば、外せないのではないかと思います。
 このリーダー作では、ピアノの Luca Mannutza が音の作りでは前面に出ているのですが、ソロの時点ではあまりリーダーシップを取ってはいません。そういうことでいえば、トータルな面でロレンツォ・ツォッチのやりたい音楽が表現されている(リーダー作だから当然なのですが)と思います。例えば、ボッソとやった作品などは、互いに自己主張しながらその場の即興的な部分で、新鮮な音楽を作り上げてゆくわけですが、そういうところはあまりないのではないかと思います。
 では、ロレンツォ・ツォッチはどのような音楽を指向しているのかと考えれば、アーバン(都会的)な音なのかなとこの時点では思います。Flavio Boltni のトランペットにしても、ソフトな音色です。そのフレーズも、どちらかといえばエモーショナルではなく、洗練された情感を込めたものです。このへんで、狙っている音楽が見えてくる印象があります。全10曲中7曲がロレンツォ・ツォッチのオリジナルです。
 かといって、昔のブライアン・ブレイドのフェローシップのような明確なコンセプトを持っているわけではなく、あくまでジャズ本来のもつ即興性(イコール、ドラミングの妙みたいなところです)にこだわっていると思います。まあ、印象によっては、中途半端という感じを持つかも知れません。物足りなさなを感じたら、それは聴くタイミングを外したと思うしかないのではと思います。
 7曲目「Two Years」でのロレンツォ・ツォッチの息を切らさない、手数の多いドラミングは圧巻です。肝心なとこころに強弱のある衝撃派を入れ込み、推進力を作ってゆきます。これは、最高にいいですね。思わず聞き惚れるドラミングです。このメンバーは、若手主体なのだと思いますが、これが一癖二癖ある強者であれば、かなりの高見まで演奏は舞い上がるのではないかと思います。
 最後に、ピアニストはエンリコ・ピエラヌンツィの影響をなにがしか受けているような気がします。音が近いです。タッチと言い、音の選び方と言い、間といい。8曲目スティングの「Seven Days」での演奏は、まさにそういう印象です。ですから、気持ちよい、アメリカのブルージーな音色が混じる音ではなく、純粋なクラシカル的なアプローチのジャズピアノです。
 最後の最後、最後の曲「E po' Cha fa」のKarimaのボーカルはいいですね。新緑季節にもってこいです。なんか、さわやかな気分になりました。

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