Hans Olding『Projeto Brasil!』 | kumac's Jazz

Hans Olding『Projeto Brasil!』

 スエーデンのギタリスト Hans Olding の2015年4月1日、2日の録音の作品です。メンバーは、Sigurour Flosason の(as,alt-flu)、Hans Olding の(g)、Pordis Gerour Jonsdottir の(cell)、Ola Bothzen の(ds)です。チェロが入っているのが面白いです。

 作品のコンセプトは、表題のとおりブラジル音楽へのオマージュ的なものです。冒頭、1曲目「Tom」は、最初に入ってきた音を聴いたときに、一瞬、チック・コリアのリターンフォーエバーを彷彿とさせたのですが、チェロの音が入ってきて、またギターのどこかテリエ・リピダルを彷彿とさせる無機質な響きが、直ぐにその印象を消し去ります。

 ブラジル音楽に近似してゆこうとする姿勢なので、明るい、軽快なボサノヴァの音かと思えば、まったく違います。リズミカルでもないですし、そのミスマッチが、どうにもこうにも朝から考えさせられてしまします。「深淵」かつ「クラシカル」かつ「メランコリック」なのです。この三つの言葉からとてもブラジル音楽は想像できません。ただし、ゆったりとしたメロディーは、まさしくラテンの音色で染め尽くされています。
 つまり、ブラジル音楽が好きな Hans Olding が、自分なりのブラジル音楽、特にメロディーに感化された音楽を作ったと言うことではないでしょうか。あの、太陽の燦々と注ぐ、砂浜で尻の肉剥き出しにビキニ姿で闊歩する若い女性のが、その後、家に帰って、喜怒哀楽を一人鏡に向かって自問自答する、そんな内気な青春を音楽で表現したものなのかもしれません。

 凄いなと思ったのは、アントニオ・カルロス・ジョビンの曲が全9曲中5曲入っているのですが、どれも、前述したようにメランコリーな演奏にも関わらず、メロディーの美しさが際だって響いてきます。多分、ジョビンの曲が素晴らしいからだと思います(多分に聞き慣れていたこともあるからかもしれませんが)。なんと言っていいのか、不思議な世界だし、ちょっと抽象化した美を見せられたような感覚です。

 ブラジルという表題に惑わされて買った(私は違いますが)ら、大失敗です(後半の曲は、けっこう軽快なノリです)。チェロとフルートは完全にジャズのアプローチはしていません、クラシックのスタンスを貫いています。しかし、なんかどこか微笑ましい、外では容器ですが、家で内気な人間を見ているようです。

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