Domenico Sanna『Brooklyn Beat!』 | kumac's Jazz

Domenico Sanna『Brooklyn Beat!』

 録音年月日が定かではありませんが、多分2014年です。イタリアのローマ在住のピアニスト Domenico Sanna のピアノトリオアルバムです。彼は、この作品の録音の時点で30歳とのことですので、若手と言うことでしょうか。録音は、ニューヨークのブルクリンにあるバンカー・スタジオとクレジットされています。全9曲中、7曲がオリジナルのようです。

 タイトルの通り、この作品の肝はビート、つまりリズムにあります。終始一貫して、強烈に襲いかかるのはドラマーの Dana Hwkins のキレのあるドラミングです。ドスがきいているわけでもなく、ソウルフルな心地良さを感じさせるわけでもなく、とにかく手数が多い印象です。さりとて、音に直線的で、あっさりとしてストレートな印象があります。結局、切れがいいね、となるのですが、このリズムの感覚は、なかなか滅多にお目にかかれない産物です。トニー・ウイリアムスとも違う、バリー・アルトシェルとも違う新鮮な感覚を持ちました。

 またベースの Ameen Saleem は、逆に重厚な音を響かせます。バスドラムをかき消すようなベースのビートです。このへんの三者のバランスは見事かなと思います。

 で、主人公の Domenico Sanna ですが、この作品ではアコーステックと電子ピアノを使い分けています。でも、あまり両者で演奏や聴いた音に違いはないですね。乗りの良いピアノでは決してないです。一音、一音自分の間で演奏をします。だから、ドラムとベースの強烈なビートに対して、直接的な反応ではなく、意識的に距離を置いた演奏をしています。それが、彼の間なのだと思うのですが、心地よい印象は持ちます。そして、ただピアノをリズムに乗せて鳴らせば良いというアプローチはしていません。

 つまり、今風のロックの影響をモロに感じさせるジャズにはなっていないということです。これは、珍しいのかなと思ったりもします。どちらかといいえば、フリーフォームに近い演奏ですが、しかし、誰も彼らの音楽を聴いて、フリージャズの系譜としては考えないでしょう。

 内面的な印象画風な演奏です。6曲目のスタンダードナンバーの「Body And Soul」なんかを聴けば、そのことは良く理解できると思います。表面的には原曲の印象は消え失せています。再度構築し直すと言うよりも、既に原曲の良さが血肉になった上で、綺麗に排泄している印象です。すばらしい、リリシズムです。こういう音を、じっくりと聞いていると、嬉しくなりますね。

Brooklyn Beat!/Imports

¥2,553
Amazon.co.jp

にほんブログ村 音楽ブログ ジャズへ
にほんブログ村