Stan Getz『Captain Marvel』 | kumac's Jazz

Stan Getz『Captain Marvel』

 チック・コリアをジャズ界の表舞台に登場させた恩人がスタン・ゲッツとしたら、チック・コリアがフリーフォームのジャズを経て己自身とジャズの無理のない調和ある世界を獲得できたのは、リターン・フォー・エヴァーでの活動のおかげと言ってもいいのかもしれません。

 その両者が、時を経て、まだ再会とまでは言えない、さほど経っていない年月で相まみえた作品です。録音が1972年。この時期、ジャズの本流は、ロックや電子音楽の影響が強く、スタン・ゲッツにとっては、不遇な時期ではなかったかと思います。その意味で言えば、流行の先端をゆく、チック・コリアのスタイルにあやかろうという魂胆は見えます。スタン・ゲッツは、自己の信念を押し通すほど頑固ではなく、どちらかといえばボサ・ノヴァ路線に走ったかと言えば、電子楽器を取り入れたりと、新しいものには敏感だったと思うのですが、結局、若い頃に会得したオーソドックスなジャズのスタイルに終始したミュージシャンではないかと思います。

 この作品でも、完全リターン・フォー・エヴァー調の演奏に対して、スタン・ゲッツのソロは、スタイルを変えることなく、吹いていますが、どことなくラテン調のリズムに乗れないところが感じられ、湯水のごとく湧いてくる彼独特のメロディアンスでスピード感があるソロは、あまり聴くことができません。

 あまり、決め事はなく、自由にアドリブ主体で曲を演奏しているので、間延びする印象がありますが、その分、それぞれの奏者の力量、あるいはこの録音に臨むにあたっての調子が測れる感じです。

 全体的に騒がしいです。その原因は、明らかで、ドラムにトニー・ウイリアムスを持ってきたことにあると思います。引き立て役に徹するつもりで叩いているのでしょうが、どうしても決めにいってしまっています。それが、少々、煩いです。ライナーノーツ氏の中山氏は、このドラミングの煽りが凄いと絶賛していますが、あまりにもメリハリがないような気が kumac にはします。

 とは言っても、とても、ある意味、スタン・ゲッツの創造性の限界(万能ではないこと)を知ることのできる、楽しい作品だと思います。




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