Alberto Marsico & Organ Logistics『4/4』 | kumac's Jazz

Alberto Marsico & Organ Logistics『4/4』

 イタリアのオルガン奏者、アルベルト・マルシコのトリオアルバムです。構成は、アルベルト・マルシコのオルガンに Diego Borotti のテナーサックス、アレッサンドロ・ミネットのドラムです。構成だけを考えれば、ファブリッツオ・ボッソとのスピリチャルからトランペットがテナーサックスに変わっただけですが、アルバムのコンセプトが全く違います。よって、演奏はよりコンテンポラリーなジャズに仕上がっています。
 
 大きな違いの第一点は、当然ながら、主役はアルベルト・マスシコです。彼が今、やりたい音楽を展開しているという理解でいいでしょう。オルガンという楽器の特徴から、よりソウルフルな、言ってみればスピリチュアルのような教会音楽まで遡る根源的な魂を揺さぶるイメージの音楽が似合うのですが、この作品では、ソウルの魂は全く失わず、その上に原点回帰ではなく、現代的な感覚を追い求めています。

 ジャズにおけるオルガン演奏は、教会音楽の雰囲気を創り出す心理的な空間音楽から始まり、それをハードバップ時代のジミー・スミスがエネルギッシュな自己主張の音楽に変え、その後のロックミュージックやソウルミュージックの隆盛で、どこかジャズオルガンの存在の輪郭が見えずらくなり、今日に来ているような気がします。

 日本のジャズオルガンの第一人者の KANKAWA にしても完全にポピュラーなオルガン演奏です。ジャズとはどこか言いがたいところがあります。

 その、ジミー・スミス以降の生粋のジャズオルガンは、果たしてどんなものなのだろうかという、素朴な疑問がまだ残っている今の状況で、アルベルト・マルシコの存在は、とても面白いと思います。作曲の才能にも恵まれた彼の演奏は、ヨーロッパのジャズの範疇だけに収まらないおもしろみがあると思いまます。特に、日本においては、受け入れられる部分がかなりあると思います。

 ワンホーンライクなソロにおけるメロディーラインの取り方などは、単なるハードバップ調ではなく、新感覚的です、「新感覚」というのはもはや古い概念で、少々時代遅れと言われると思いますが、ことジャズオルガンの世界では、新鮮なのだと思います。そして、アメリカ人の演奏とは違い、ヨーロピアン的なクラシックの伝統を感じます。やはり独特です。かと言っても、5曲目「Nica」でのこてこてのソウルフルな演奏も、見事に仕上げます。この点は、スピリチュアルの演奏で証明済みだと思います。

 テナーサックスの Diego Borotti は、他のミュージシャンに喩えれば、ケニー・ギャレットのような極太でざらついた、激しい音を出します。かといって、羽目を外すことはなく、見事にスイングします。このへんは、コールマン・ホーキンスを彷彿とさせるし、ジョニー・グリフィンもイメージできます。とにかく、ご機嫌です。

 そして、最後にドラムのアレッサンドロ・ミネットです。彼のドラミングは、一言で言えば、冷静かつ大胆です。リズムキープに徹しながら、音楽の流れによって、大胆なドラミングを展開します。演奏が盛り上がって佳境に入ると、とてもエネルギッシュな叩きをしてきます。他の演奏者を圧倒できる存在感を発揮します。一聴すると音は、繊細ではない感覚を持ちますが、元々の音のレンジの幅が広いので、表現力はまったくもって他に劣りません、器が大きいといって良いと思います。この作品でも、出しゃばらず、かといってしっかりと決めるところは決めています。

 オルガンジャズの神髄を聴きたい方は、絶対におすすめです。

 なお、この作品は CD 媒体では発売されてはいないようです。お求めは、iTunes などからなら可能です。

 7曲目「Soul Song」は、ゴスペル調で超ご機嫌です。



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