Kenny Dorham『The Flamboyan,Queens,NY,1963』 | kumac's Jazz

Kenny Dorham『The Flamboyan,Queens,NY,1963』

 ケニー・ドーハムは、『クワイアット・ケニー』との出会いのタイミングが、彼の印象を決定づけるような気がする。それも、一生涯にわたって。

 一般的には、どことなく中途半端でこれといって特徴の無いハードバップ時代のよく、名前がジャケットにクレジットされているジャズメンで終わってしまう。しかし、『クワイアット・ケニー』での、物静かで清楚なトランペット演奏を聴いたとたんに、印象が決定的に変わってしまう。この作品の演奏を気に入った方は、いわゆる<静かなケニー>を中心軸にその後、ケニー・ドーハムというトランペッターを聴いてゆくことになる。そうしないと、どこか見失ってしまう危険姓があるから。

 しかし、ケニー・ドーハムの演奏活動全体を見渡した場合、『クワイアット・ケニー』は、本質からちょっとズレた<異質>なのだと思う。それに捕らわれてしまうと、木を見て森を見ないことになる。

 kumac は、ケニー・ドーハムの最高の仕事は、プロフェッツの演奏だと信じる。実際に聴ける作品は、『Round About Midnight at the Cafe Bohemia』で聴けるのみであるが、ハードバップの歴史上でも、最高部類のライブ録音だと信じている。

 以上の二つの表情を往き来したのが、ケニー・ドーハムではないかと今は思っている。

 この作品は、1963年1月の録音。テナーにジョー・ヘンダーソンを配している。これはプロフェッツで J.R.モンテローズを配したこととの延長線上に考えても良いような気がしている。ケニー・ドーハムという男は、図太い音色の相棒を好んだということではないだろうか。これは、マイルス・デイビスがコルトレーンを好んだ思考に似ていると思う。

 至って、標準的なハードバップのクインテット演奏であるが、実に味わい深い。どうして味わい深いのかというと、ストレートに吹いているからだと思う。例えば、3曲目の有名な曲『サマータイム』でのテーマ演奏からアドリブに続く、一連の音のラインは至極、まっとうである。さらっと吹くわけでもなく、感情を高めた部分では力みを見せてくれるし、名演では決してないが、聴きやすさがある。自然と沈思する、奈落の底に落ちてゆくような、そんな無味乾燥な(別な言い方をすればブルージーな)味わいがある。

 これが、好きになれば、ケニー・ドーハムのジャズメンとしての一生を受け入れることは容易になるのではないかと思ったりもするけど、それは kumac だけの悪趣味であるのかもしれない。

 メンバーは、Kenny Dorham(tp)、Joe Henderson(ts)、Ronnie Mathews(p)、Steve Davis(b)、J.C. Moses(ds)。


The Flamboyan, Queens, New York, 1963/Uptown Jazz

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