Bud Powell『Bud Powell In Paris』 | kumac's Jazz

Bud Powell『Bud Powell In Paris』

 kumac は、いわゆるジャズの巨人と言われている人は苦手です。チャリー・パーカー、レスター・ヤング、デューク・エリントン(ビッグバンドだけ)、ビリー・ホリデー、チャーリー・クリスチャン、そしてバド・パウエルもです。食わず嫌いではないのですが、「凄い」、「偉大だ」、と世間から褒め称えられれば、称えられるほど、その言葉に惑わされて、ついつち落ち着いて聴けない精神状態に陥ってしまい、結局は何が良いのかさっぱりわからなくなる始末です。かろうじて、ビリー・ホリデーやレスター・ヤングぐらいはその凄さがなんとなく感じることはできている。他に、セロニアス・モンクやチャーリー・ミンガスなどがいるけど、幸い性格的に馬が合ったのかどうかわからないけど、お気に入りにはなっている。

 で、バド・パウエルですが、その凄さがさっぱりわからないのです。ジャズの歴史の中で、その奏法がそれまでのブギウギやラグタイムのストライド奏法、スイング系統の単なるリズム伴奏楽器の枠から開放し、なおかつシングルトーンで自己主張するホーンライクなそれまでと比べて革新的な演奏が生まれる先鞭をつけたミュージシャンとしての位置づけは、理論としては理解できるけど、それが果たして後世のピアニストの演奏と比べて良いものかどうかと単純に比較すると、さほどではないという結論に達してしまうのです。むしろ、その録音の悪さや、さしたる演奏でもないのに、歴史的価値みないたことからレコード化されて、聴かされることに、辟易してしまうことの方が多いのも事実ではないかと思います。

 ブルーノートの『ザ・アメイジング・バド・パウエル』は、さすがに凄い演奏だと思うのですが、かといって他の作品も追っかけをして聴いてやろうとは思わない。どうしてか、理由は単純で、いわゆる演奏に「癖」がないのですね。凄い演奏には、癖のあるものと至極当然のものとがあるような気がしています。セロニアス・モンクは「癖」があるのでいくらでも聴きたいと思うのですが、バド・パウエルは、次に何が出てくるのかという、スリル感がないのです。偉大だけに、どれもかも絶対的な演奏になってしまって、おもしろみがないと言ってもよいのかもしれません。

 くどくどと書きましたが、それでこの Bud Powell『Bud Powell In Paris』ですが、結論から言えば、とても面白いです。どこが?と尋ねられれば、答えは、「普通の演奏だから」ということになるのでしょうか。どこもかしこも、「何かやってやろう」という力みが入っていません。いわゆる、自分が正直に出ている演奏でしょうか。kumac のベストナンバーは8曲目の「I Can't Get Started With You」です。このタッチの柔らかさ、そして気持ちの広がり、こんなにデリケートなピアノトリオ演奏は滅多にお目にかかれません。

 ということで、この作品は、kumacの記憶の中に永遠に残る愛聴盤になりました。

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