Bill Evans『I Will Say Goodbye』 | kumac's Jazz

Bill Evans『I Will Say Goodbye』

 1977年5月11日~13日の録音。メンバーは、Bill Evans の(p)、Eddie Gomez の(b)、Eliot Zigmund の(ds)です。

 冒頭のこの作品の表題曲、「I Will Say Goodbye」がとても印象的な作品です。まさに、エバンスのリリシズムの極地と言えそうな雰囲気を持っています。曲自体が、美しいバラードで、それも耽美的な音の反射光を使った、陰影の少ないものなので、余計にエバンスのタッチや、音の選びの良さが際立ちます。

 2曲目「Dlphin Dance」は、ハービー・ハンコックの曲。ここでは、3者のインタープレーを十分に楽しむことが出来ます。エバンスが自分の音に没入すると、その精神的な密度の中にエディ・ゴメスもエリオット・ジグモンドもなかなか入れないところが、余計にエバンスの孤独を感じてしまいます。

 3曲目「Seascape」は、これも冒頭の曲と同じような美しいバラードです。冒頭の曲にも感じましたが、エバンスのタッチが柔らかいです。これは録音もあるのでしょうが、一音一音のタッチの響かせ方が、ふくよかです。ペダルの使い方が初期と変わってきたのかもしれません。自分の空間に放たれた音を確かめているという印象です。ソロの部分では、リズミカルに引くのですが、なんかちょっと物足りないです。やはり、ラファロ、モチアンのトリオを連想して比較してしまう、ということでしょうか。

 この作品は、曲自体が、とても美しい、そしてメロディアンスなものが選ばれて演奏されています。そして、そのどの曲も、なんかちょっと悲哀を帯びたのが多いです。聴いていると、ちょっとこっちまで悲しくなってきます。その最たる演奏が、4曲目「I Will Say Goodbye」です。同じ曲が二つは言っていますが、どちらかがおまけと言うことではないと思います。こちらのテーク2の方が kumac は好きです。作品の流れの中で聴いているせいかもしれませんが、1曲目の方がちょっと、全体の構成のバランスが悪いような気がします。テンポも不安定です。

 5曲目「The Opener」が、この作品中の唯一のエバンスのオリジナル作品です。ここでは、アグレッシブなピアノタッチの演奏を聴くことができます。このトリオで約11年続けた最後時期の作品ですが、さほどに成熟しているとは思えないところが残念ですが、それを上回るエバンスの綺麗で歯切れの良いピアノ演奏が聴けるのが嬉しいです。

 聴いて、絶対に損をしない作品だと思います。



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